「しつけ」と聞いて想像するのは、どんなことでしょうか?
挨拶の習慣、食事中のマナー、家の外での場面などにおいてやるべきことをきちんとさせること、その場では好ましくないことをやらせないようにすることなどが思い浮かぶかもしれません。
そう思うといつから「しつけ」をしたらいいかと聞かれたら、1~2歳代から課題に感じてくる保護者の方が多いのではないでしょうか。
身近な場面だと、家の中での「おはよう」や「おやすみ」の挨拶をすること、食事のときに遊び食べをしないこと、小さな子が集まる場で物の取り合いなどがあった時に、言い聞かせて納得させることなどがありそうです。
0歳児にこのような「しつけ」はまだ難しいのでは、と思う人がほとんでしょう。
では0歳児には「しつけ」は必要ないのでしょうか。
そんなことはありません。
「しつけ」とは、子どもに「何かをさせない」ようにしたり、「何かをさせる」ようにしたりすることだけではなく、その根底には、日々子どもと濃い時間を過ごしている人との信頼関係の構築があります。
その上に少しずつ、それこそ成人するまでの長い年月をかけて、家族だけではない他者と一緒に過ごす共同体の中で、いかに行動していくかということを、子ども自身が判断していけるように方向づけていく過程があります。
「しつけ」というと限定されたイメージがありますが、「自分も他者も心地よく過ごしていくために必要なことを伝えていくコミュニケーション」と捉えることができます。
そのための準備=コミュニケーションの構築は、0歳代から始まっているのです。
0歳からはじめる「しつけ」
「語りかけて」「ほめて」信頼関係を
赤ちゃんが全力で取り組んでいることを、たくさん「ほめて」あげましょう。
では0歳児との間で、「しつけ」の土台となる信頼関係はどのように築いていけばよいのでしょうか。
基本的なことは、まだ泣くことでしか意思表示できない赤ちゃんの要求に応答して、抱っこや授乳をしてあげること、なるべく規則正しい生活習慣を整えてあげることです。
これが信頼関係の始まりで、「しつけ」の何よりの土台になります。
そして赤ちゃんにたくさん「語りかけて」「ほめて」あげましょう。
そうすることで信頼関係が築かれ、赤ちゃんの自信ややる気が引き出されていきます。
「ほめて」のは、日常の小さなことでいいのです。
何かができるようになったということももちろんですが、元気に笑顔を見せてくれた、元気いっぱいに泣いた、おっぱいやミルクを飲んだ、おしっこやうんちをたくさんした、離乳食を少し食べた・・・。
赤ちゃんが全力で取り組んでいることに対して、「にこにこ笑顔だね」「元気な泣き声だね」「頑張って食べたね。できたね」などと声をかけてあげること=ほめることです。
このように信頼できる相手が近くにいて、自分の意志を主張でき、それを受け止めてもらえるという体験を少しずつ繰り返していくことが、2歳代、3歳代と成長してきたころに、自分以外の人の気持ちを想像するという行為につながっていきます。
少しずつ「危険を伝える」「我慢させる」ことを積み重ねていこう
好奇心がグングン育つ時期
赤ちゃんが成長してこちらの言葉がけが少しずつ理解できるようになってきたら、危ないことや我慢しなければいけないことなどを少しずつ伝えていきましょう。
赤ちゃんが生活する住まいは、危険がない状況を作るのが基本です。
しかし、つかまり立ちや伝い歩き、そして1歳を過ぎてヨチヨチ歩きが始まって、動きが活発になり行動範囲が広がると環境を整えるだけではすまない危険が周りにあふれています。
完璧に危険がない状況を整えるのも不可能ですし、赤ちゃん自身が多少の危険に近づき、注意され止められるという経験も必要になってきます。
こういったときは「危ない!」ということをしっかり伝えてあげましょう。
また、「我慢させる」ための声がけも少しずつしてみましょう。
まだ遊びたくてもご飯の前にはおもちゃを箱に入れよう、手を洗おう、まだ外で遊びたくてもそろそろおうちに帰ろう、お友だちが遊んでいたおもちゃを取ってしまったら「はい、どうぞ」してみよう・・・。
「ダメ」という言葉よりも、「~しよう」という形で誘ってみましょう。
その時その時に親が期待するように動くことができないことの方が多いかもしれませんが、長い目で見て、地道な声がけの積み重ねが小さな子どもの経験となって積み重なっていくはずです。
大人のぶれない姿勢が大切
赤ちゃんや小さな子に混乱を感じさせないために、1つのことを伝える上で、その人の中の気分でぶれない、家族間でぶれないことも大切です。
日々子どもと向き合う立場であることが多い母親と違って、そうでないことが多い父親や祖父母は、母親が積み重ねていることを察することができなかったり、「少しぐらいいいじゃない」という気持ちが多いこともあり、そのギャップが母親のストレスになってしまうこともあります。
母親としての方針を伝えて理解してもらうことができるといいですね。
言うことを聞いてくれないことも子どもの成長過程のひとつ
幼児期には生活のごく一場面だけが切り取られて、「聞き分けのよい子⇔よくない子」「育てやすい子⇔育てにくい子」「穏やかな子⇔気性の激しい子」という枠が持ち出されてしまう場面もあります。
ご自身を振り返ってみると、物心ついた以降の子どもの頃や、子どもの頃でなく大人になってからでも、他人の注意やアドバイスがスムーズに入ってくる時と、そうでない時があったことはないでしょうか?
小さな子どもの中にも、心の中では「こうしてはいけない」「こうしなきゃ」「こうしたい」という気持ちがあっても、それを素直に受け入れられないことがあります。
それは、子どもの成長過程において欠かせない自我の育つ姿でもあるのです。
まとめ
「しつけ」の土台には、親子の信頼関係の構築が必要です。
家族以外の人と接するまでの準備期間に、いかに子供の成長を手助けできるかが0歳から始まっているんです。
「語りかけて」「ほめて」「危険を伝える」「我慢させる」を繰り返して、ゆっくりと子供の成長を見守りましょう。
きっと「しつけ」は、子供の為になると思います。